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2025年1月24日(金)にてダイバーシティフォーラム「Spiral UP!」を開催し、6社220名の社員が参加しました。
Co-ALIVE(食品企業共同企画)では、2018年よりダイバーシティフォーラム「Spiral UP!」と題し、その年のテーマの第一人者の方とそれを実践している企業の方をお招きし、講演を行ってきました。
「SPIRAL UP!」の取り組み、目的についてはこちらからご覧ください。
▶About us
今回のテーマは「経営戦略としてのDEI」。
経営戦略としてのDEIの考え方や、企業の中での実際の取り組みに関する講演となりました。
ファシリテーションにアーティストであり株式会社Cradle代表取締役社長のスプツニ子!様をお呼びし、
パナソニックコネクト株式会社の西川岳志様、油田さなえ様のお2人から、実際の事例をお話しいただきました。
本記事では、当日の講演・パネルディスカッションの内容、受講生の感想などをご紹介します。
◆講演
講演冒頭では、スプツニ子!様より、ダイバーシティ推進におけるポイントをお話いただきました。
「ダイバーシティ推進を組織でやるときに出てくるコメントNo.1は『ダイバーシティ推進なんて逆差別、女性優遇だよ』。『今の時代、男も女も関係ない、うちはもうフラットなんだから、ダイバーシティ推進なんて逆差別じゃないか』。」
「一見耳障りのいいことを言っているようで、実は惜しい。今、ダイバーシティ推進のポイントは、私たちがいる社会の偏りを見ることなんです。社会の構造の偏りとか、構造的な差別ということを無視して『平等』(扱いを同じ)にしても、『公平』ではないんです」
「今の時代、悪意を持って、やい女性差別してやれ、LGBTQ差別してやれ、みたいな人はほとんどいないんです。ただ、当人たちに差別するような意識が全くなくても、社会全体の構造の偏りとか、企業の働き方の構造の偏りによって、特定の性別、人種、セクシュアリティ、障害、特定の属性にとって不利な状況が生まれ続けてしまう」
こうした構造的差別に対し、多様な視点を管理職・マネージャー層に入れていくことで、組織の中の「構造の偏り」の点検・チェックが強まり、フラットで多様な組織デザインが促進されると強調いただきました。
スプツニ子!様からバトンを渡していただく形で、パナソニックコネクト株式会社の西川様より、ダイバーシティ推進に取り組んでいくこととなった背景や立ち上げ前の課題についてお話いただきました。
「我々(パナソニック)コネクトがやろうとしている事業は、製造業だけではなく、ソフトウェアサービスというすべてのバリューチェーンの中でサポートしていく仕事。製造業のDNAで製造業のことだけを考える人の集まりでは、目指す姿が実現できない。…ダイバーシティインクルージョンについては、経営戦略のど真ん中として位置付けている」
「じゃあ取り組みする前どうだったんだと。もともと製造業ですので、事業部長を中心とした上意下達の組織でした」
「今、女性管理職30%を目指しているんですけども、それを目指そうと決めた7年前は、そもそも女性比率が11%しかなかった。女性の管理職にいたっては2%しかいなかった。7年、いろんな取り組みをしてきまして、まだまだですけれども、女性の比率が17.6%に上がり、管理職も7.7%まで上がってきた」
「一番大事なのは、トップのコミットメント。もうこれ間違いないなって思ってます。トップがブレたら、もうそれでおしまいです。
トップはブレなくても、一つ下のレイヤーに降りた時にそこがブレる時があるんです。CEOはこう言ってるけど、『そうは言っても現場ではね』みたいなことを部長さんとか課長さんが言ってしまったらそこで崩れちゃう。コミットメントの連鎖っていうのをしっかり生んでいくということはすごく大事だなと感じています」
また、西川様と共にダイバーシティ推進を担当されている油田様より、具体的な社内のお取組み内容についてご解説いただきました。
◇全体のマインドセットチェンジ:
・社外ゲストを招いた講演実施。2023年度は「介護」を、2024年度は「障害」をテーマにし、ゲストとCEOのトークセッションを行う。
・ダイバーシティインクルージョンに関する研修実施。パナソニックグループ共通研修として全社員向けに実施。パナソニックコネクトとしては、マネージャー研修を独自で実施。ダイバーシティの基本をマネジメントに生かす内容として、半日間の研修
◇マイノリティギャップ解消
・女性管理職比率に働きかけるジェンダーギャップ解消。2035年に比率30%を達成すべく、取り組みを実施。
・10月を「コネクトDEIマンス」とし、様々なセミナーや生理痛体験会、外国籍社員のネットワーキングなどを強化実施。
・女性社員のライフプラン設計支援として、卵子凍結助成制度の導入。
・男性育休の推進。2022年10月からは、育児休業における有休取得可能日数を増やしている。
・東京レインボープライドに協賛。経営陣が企業経営者アライネットワークに加入し、社員のアライ活動も高めている。
その他、障害者として働く社員への一斉ヒアリング、介護にあたって使える国/会社の制度を事前に学習できるツールの導入、生理休暇の利用ハードル解消に向けた対象拡大など、多岐にわたる様々なお取組みをご紹介いただきました。
「『すべての人が公平に扱われている』、『一個人として尊重されている』。この二つの項目について、毎年状況を確認しております。少しずつではありますが良くなっている、というような状況です。まだまだ発展途上の部分もございますので、様々な企業の方のいろいろなお話を聞きながら、良いものを常に取り入れていく姿勢で臨んでおります」
◆質疑応答
講演パート終了後、活発に質疑応答が行われ、講演内容が深く掘り下げられました。
質疑の一部をご紹介します。
Q: 組織の中でダイバーシティ推進を行う中で、どんなハードルにぶつかりましたか?また、それをどのように乗り越えましたか。
A:
「日本の会社でDEIを推進することに、力強く反対する人は今は多くはない。どっちかというと、『これ私は関係ないよね』と白けちゃう人がいて、それが連鎖し、一定の塊になってしまうので、そうした(白けてしまった)皆さんをどう巻き込んでいくかが難しさなのかな」
「さまざまな制度を入れていくにあたって、それぞれに色んな意見があるなとは感じました。
ただ、パナソニックコネクトとして「こういう考えだからやっていくんだ」という強い・ぶれない思いを持ってやっておりますので、制度導入に至った考えや経緯を、丁寧に説明することがやはり大事なんじゃないかなと。
最近の学びは、いわゆる本社側・本部側から発信するものの届き方よりも、事業部の中で顔の見える関係の中からの発信のほうがやはり受け入れられやすい・届きやすいこと。『実際に会う』ことの大事さはすごくあると思います」
Q:「全員が100%納得する制度づくり」は難しいことが多いと感じています。どのように合意形成を進めてこられたのでしょうか。
A:
「人事がDEIの責任者にならなかったのはそこが理由。人事が責任を持つと、そこ(100%の納得が生まれていないことを)を気にしちゃう。
人事に関して素人なので、むしろ自由に、『100人納得しなくても70人嬉しいんだったらいいじゃない』と言える立場。それを役員がグイグイ言いますので、満点じゃなくてもどんどん前に進んでいくということは続けてこられたような気がする」
「100人が大賛成だっていう制度はないと思うんですよね。自分自身が育児している当事者だったら、育児制度を進めてほしいし、それは介護も同じ。
100人の意見を聞くというよりは、会社として今どういう部分に重きを置きたいのか・会社としてのDEIの方針に合っているかをベースにして、スピーディに進めています」
Q: 今回の講演のような、DEIの本質を語っていただく声、非常に有意義だと思います。しかし、DEIに反発する人ほど、DEIの本質をわかっていなかったり、わかろうとしなかったりしてで、こういった講演を聞いてくれなかったりすることもあると思います。そういった人を巻き込む方法はあるのでしょうか。強制的にセミナーに出席してもらうと、表面的・否定的な意見を書かれたりと…。
A:
「アンケートは、読むの勇気いるんですよね。書かれた方も我々と同じ悩みを抱えてるんだろうなと思うんですけど。
我々の中にも、これの特効薬ってまだ見つかってないです。ただ、粘り強く。その方にも絶対どこかにやる気スイッチがある。きっと、何かのお困りごとが必ずあるはずです。いろいろな手を打っていく中で、どこかでその方にもリーチできたらいいなと思います」
◆受講生の声(講演終了後アンケートより)
「今のアメリカの情勢などから、今まで進めてきたDEIに負の引力が働くのでは…と思っていたので、そのあたりも踏まえながらしっかりと説明くださってよかったです。また、役員としてご担当として取り組まれてきた想いや課題への対応についてのお話はとても分かりやすく、なぜやるのかをぶれずに伝え会話を続けていくという点が印象に残っています」
「自分も経理部門に所属しているため、経理畑の西川様がDEIを担当されるようになった経緯が大変興味深かったです。
DEIを推進するためには、「平等ではなく公平な仕組みにする」という概念を現場の方々にも理解してもらうこと、また無関係な人なんていない「自分事」として捉えてもらうことが、何より重要なのだと感じました」
「人事として、これまで出された成果に対して報酬で報いるのが最も公平であると考えていましたが、その成果の出しやすさに違いがあること(=背後に構造的な差別があるため)をまずはしっかり理解することが大切であると感じました。そのうえで、それらのギャップを埋める施策を立案・実行し、より公平に誰もが成果を出しやすい環境を作っていきたいと感じました」
「女性活躍やダイバーシティと聞くと、恥ずかしながら逆差別というワードが自分の中にも浮かんでいましたが、そもそもの社会構造の偏りを考えると、個別に取り組みを進めなければ行けない段階にあることを理解できました。また社会的見ても自社でも近年様々な取り組みが推進されているとは思いますが、パナソニックコネクト様のように部門ごとのDEI推進担当が置くことで、推進力を高めることができると感じました。実際に取り組むには課題もありそうですが、他人事と捉えている世代の方にも届けられる仕組みを導入できたらと思います」

